JRT〜Trial For The Japan Alps Traverse Failed

JRT〜Trial For The Japan Alps Traverse Failed

来夏の日本アルプス縦走に向けての序章として、今夏は軽めの登山に挑戦しようと思っていたが、いざ実践の段階になると本番ルートで実力を試そうと欲がしゃしゃりでてきた。結果は無残な敗退に終わったが、その顛末をお伝えしよう。

縦走ルートはTJAR(Trans Japan Alps Race)を自宅からアクセスの近い南から北へ抜ける逆ルートにした。北から南へ抜けた方が高度が下がっていくので体力的に楽になることを後で気がつきました。

梅雨明け早々RZ50で出発。道の駅いっぷく処横川で野宿し、翌朝池山登山口から一座目の光岳登山に入ることに。池山登山口への途中の空き地にRZ50を無断駐車。ザック重量は約17kg。

汗だくで歩くこと30分、池山登山口から登山を開始。

2時間ほど登っていましたが、運動不足とザックの重さで腰がフラフラになって完全にバテてしまいました。体が出来ていないのでテント・寝袋を背負った縦走は無理と判断、根性もなく開始早々登山を断念。

南アルプスの縦走は諦めて単座登山に切り替えて中央アルプスへ移動。
空木岳に登ることにしました。

駒ヶ岳駐車場で野宿し、翌朝悪路を走って一番上の駐車場に駐輪。その上の乗入禁止の駐車場まで乗り入れる車も多いね。

背負うザックを極力軽量化。念の為、寝袋も背負い総重量は10Kg弱か。池山登山口から入っていきます。

7時間も山中を彷徨っていたものの結局頂上まで行けず終い。理由は道に迷って隣の簫ノ笛山へ行ってしまった事。途中急な下りがあって可怪しい、またGarmin Instinctで空木岳の方角から大分外れていることを分かりつつも、簫ノ笛山頂に着いて漸く納得して引き返した次第。

この分岐に気が付かず左方向へ曲がってしまったのが敗因だった。

ツキにも見放されたので登山を一時中断して仕切り直すことに。その晩は道の駅日義木曽駒高原で野宿して翌日実家へ向かいました。

次回の登山に向けて準備開始。

娘のお下りの重いBlack Wolf 製Cedar Breaks 65lザックと底に穴が空いた安物の中華製登山靴を買い替えました。俺にとっては最高級品をアマゾンで購入。それにしても登山用品は高いね。併せてヘルメットも調達。

足腰を鍛えるためにスクワットの再開と実家から最も近い図書館までザックを背負って通うことにした。日本一周出発前はスクワットを毎日100回以上やっていたが、一周後何時の間にか中断してしまったことが筋力の衰えの原因かも。ザック重量15kg、距離にして往復3時間の訓練です。図書館が日本百名山の深田久弥の生まれ故郷大聖寺にあるのも奇縁ですね。鎌倉だったら一年待ち図書がすぐ閲覧できる事と登山関係の蔵書が多いのはラッキーでした。

図書館通いの脚力トレーニングを2週間ほど経って体も慣れた頃、登山客のピークがすぎる盆明けから再出発することを決意。

体力的に縦走は無理なので、深田久弥が「穂高の気高い岩峰群は日本の山岳景観の最高のもの」と称した奥穂高岳と「日本のマッターホルン」槍ヶ岳北アルプス主峰連山登山を目指します。

奥穂高登山ルートはウエストンと嘉門次が登った南稜コースを攻めたいのだが、今や登山道も整備されていないので近くを通る重太郎新道ルートに決定。又、ウェストンが辿った槍ヶ岳への横尾本谷ルートは横尾のコルから天狗池経由コースであると考えられているが一旦奥穂高から下山する必要がある為、穗高岳山荘から白出沢を下り槍平小屋経由飛騨沢ルートで槍ヶ岳に向かうこととし(大切戸を経るのが近道だが最高難度で俺には絶対無理)、帰りは一般コースの横尾経由上高地に戻る計画とします。4泊5日の日程です。

ルートイメージ

アカンダナ駐車場で前泊

鮎釣りの拠点、道の駅奥飛騨温泉郷上宝は屋内の休憩所を使えて便利だが、上高地へのアクセスがより有利なアカンダナ駐車場のベンチで野宿させてもらいました。最近クマが出たので注意するようにとの事でしたが、酔っ払って不覚にも熟睡してしまいました。ただ、入口ゲートが開く3:30以降は登山客が集合し始めてゆっくり寝ておられません。

始発バス(4:30)で上高地へ移動。みんな早い。

登山届けを忘れずに。

河童橋を経て岳沢登山口から重太郎新道コースを登って行きます。いきなり急坂が続き先が思いやられると心配したものの、難なく2時間半で岳沢小屋に到着。

ボリューム満点の山崎大きなメンチカツを朝食に食べてエネルギー補給。今回は4個持参。

確かこの先のカモシカの立場から岩場が始まったような。ハシゴ、鎖場と何でもあり。岳沢カールの素晴らしい景色で疲れが癒やされます。

塩飴やグミを食べながら、汗を拭き拭きもう駄目だと思うこと頻り。

ひょいと平な処に出ました。紀美子平でした。岳沢小屋から3時間半経っていました。

魚肉ソーセージでエネルギー補給。

前穂高へ行く方が多いですが、俺は一路奥穂へ向かいます。

ここからがまた大変。岩場の吊屋根は鎖もロープもない略垂直な岩登りもあったものの、高所恐怖症の俺が恐怖を感じる暇も与えないほど無我夢中で両手両足を一杯広げてカニのように登って行きます。後で冷静に振り返るとこのコースは2度と御免。下りはもっと怖く感じるでしょうね。

何故か上へ上がるに従いザックの重さが感じなくなりました。不思議ですね。

頂きの穂高神社嶺宮を眼前にする辺りのゆるい登りで雷鳥夫婦?を発見。睦まじい鳴き声でその存在に気がつきました。

程なく頂きに到達。紀美子平から2時間半の道のりでした。

「上高地が開発される以前は徳本峠を越えなければならなかった。峠に立った時、不意にまなかいに現れる穂高の気高い岩峰群は、日本の山岳景観の最高のものとされていた。中略。穂高の名は、岩の秀(ほ)の高いところから来たのであろう。秀は穂に通じる。その俊秀な姿から古くは穂高大明神野山と言い伝えられ、単に明神岳とも呼ばれた。中略。そんな風にこの山は大昔から霊岳としてあがめられていた。」(深田久弥日本百名山より)

ガスに覆われて槍ヶ岳は見えずじまい。北アルプスは朝10時を過ぎるとガスが発生するらしい。

ジャンダルム方面

凄みのある円頂、実際行く気になるかな?

穂高ほど近代アルピニストを魅了した山は少なかろう。ジャンダルムだの、ロバの耳だのと、西欧アルプス風な名が至る所の岩場に付けられている。

長居せず穂高岳山荘へ向けて下山。

山荘を眼下に急なハシゴ、鎖場を下るが怖さは感じません。一歩一歩ゆっくりと下っていく。子供はぴょんぴょん跳ねながら素早く下りていきます。実に羨ましい!

1時間も掛かって山荘に到着。今晩はここで泊まり。

初めて食べた山小屋の飯はこんなものかという印象。味噌汁は薄くて醤油をぶっかけて飲み込んだ事が印象的でした。

読書コーナーで本を読んだりニュースを見たり無為に過ごして早めに床につきました。イビキがうるさく、又寿司詰めで寝ているので暑くて熟睡できません。耳栓は必須ですね。

朝起きてみると筋肉痛で歩行もおぼつかずヤバイ状態。槍平小屋に一泊する計画なので山荘裏から白出沢のガレ場を降りていきます。大丈夫と自分に勇気づけて先に進みます。

筋肉痛は益々酷くなる一方、これは時間がかかるなあと思いつつ、午後から雨の予報を思い出し増水した場合の身の危険を察して、15分程下った時点で急遽当初計画を中断、涸沢カール経由下山することに決めました。結果的にこれが正解でした。

山荘に戻って涸沢小屋へ向かいます。更に筋肉痛に加え右膝裏の筋が急に痛み始め、サイディングラードの段差のある下りで余計に膝に負担がかかったのか痛みが酷くなる一方。ポールで支えながらゆっくりと下りていきます。標準タイムの倍も掛けて何とか小屋に着きました。

朝飯定番の大きなメンチカツを頬張りながら絶景のカールに痛みも癒やされます。

休んでいる内に痛みが引いたので単なる筋肉痛かとひと安心して先を急ぎます。段差のある岩の多い下り道は思うように進みません。横尾山荘までが又長い。挙げ句の果に土砂降りの雨に降られボロボロになりながら山荘に到着。

槍平小屋に宿泊のキャンセルを伝え休む猶予もなく上高地に向う。途中でスマホを落としたことにはたと気づき戻ろうと思ったが、最終バスの時間がせっているので土砂降りの中上高地へと一路急ぐ。横尾山荘からは平坦な道が続いたお陰で痛みは治まり歩くスピードも早くなって2時間半ほどでバスターミナルに到着。

交番で横尾山荘に連絡してもらう。スマホを預かっているとの吉報。着払いで送ると言って頂きましたが再登山のモーメンタムを維持するために近々再訪するので保管してもらうようお願い。もう大丈夫です。

その晩、道の駅日義奥飛騨温泉郷で野宿して、余ったメンチカツパン2個を肴に焼酎をしこたま飲んで仮眠、翌朝実家に戻りました。

以後、右膝のリハビリに専念。

図書館通いは続けるが脚に負担をかけないように自転車で通う。サロンパスを貼っても痛みが取れないので、生まれて初めて接骨院で治療を受けることに。電気を通してから針を打ってもらって初診料960円。好天気をまちに待った10日後の再出発前日、筋が未だ若干痛むので用心して針を打ってもらう。再診料は460円とこれ又バカ安。ハリは効きますね。

台風15号が来る予報の中不安を覚えつつ再出発。念の為松友サポーターを右膝につけました。

何時もの勝手知った道を6時間かけてアカンダナ駐車場に到着。バスに乗り換えて上高地に入り、2泊3日の日程で槍沢ルートで槍ヶ岳に向かう。今回は何故か気持ちに余裕があります。

河童橋

快晴

徳沢園

横尾山荘

魚肉ソーセージで小腹を満たす

一ノ俣

ニノ俣

今晩宿泊予定の槍沢ロッヂに到着

4時間半の軽めの登山だった事と歩幅を小さくゆっくりと歩いた為か膝は大丈夫でした。

素泊まり7,300円。お風呂でサッパリして、途中買ってきたカツ丼で精をつけ明日に備えます。

夜は偶然にも播隆祭前夜祭に遭遇。玄向寺、法蔵寺の住職、副住職ご一行を交えて播隆上人を偲び毎年9月の第1金曜に執り行なわれるとの事。翌土曜は槍ヶ岳山荘で本祭の習わし。お酒も振る舞われました。ラッキー!

槍ヶ岳の歌を全員で合唱し住職の三本締めでお開き。

ツキが戻ってきたようです。昨年の日本一周の時にも実感しましたが、旅にはツキが大事ですね。

翌朝4:30、暗い内に出発。

ババ平

以前小屋があったとか。

天狗原

天狗池に行く方も多く

槍ヶ岳が眼前に迫って圧巻

ヒュッテ大槍分岐

坊主岩小屋

この原図かと感無量

槍ヶ岳は間近。膝に負担を極力かけずゆっくり歩幅を小さく一歩一歩つづら折りを進んで行く。やがて肩に到着。

深田久弥は「いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう」と称している。確かに、高所恐怖症の俺もその気にさせる穂先ではある。

槍ヶ岳山荘

山荘前にザックおいてそのまま頂上を目指すが、気持ちの整理がつかず途中で引き返してしまう。気を取り直して、用を足してから小腹の足しに魚肉ソーセージをかぶりつきアミノバイタルを飲んで気力の充実を待つ。30分後いざ穂先へ!

途中、後ろのベテラン御仁にハシゴの持ち方の指導を受けるも渋滞なかったこともあって、20分程で山頂へ。

無風。今夏一番の晴れとか。360度の大パノラマの絶景が眼前に広がり、恐怖感も吹っ飛びます。何度も登られた方が多く、周辺の山々の名前を丁寧に教えてくれました。有り難い。

穂高連峰方面

美しい緑の双六、笠ヶ岳方面

奥が立山方面とか。紅葉の頃はどうなんだろうか?

三角錐の常念岳

愚妻が高校山岳部時代常念岳から槍ヶ岳を経て富山へ抜けていった合宿の事を話していたことを思い出しました。凄くキツかった言っていたが、流石に愚妻を見直し感服。

富士山も彼方にくっきり

景色を目に焼きつけて下山。トータル1時間15分程の工程でした。

俺が言うのもおこがましいが、奥穂高岳に比べて難所はなく素人でも難なく登れますね。肝は穂先だけですよ。

今日中に横尾山荘まで戻る必要があるのでザックを背負い一気に下ります。5時間半で横尾山荘に到着。今回は慣れと小股でゆっくり下りたので脚は支障なし。

ここも素泊まり。晩飯はアルファ米とグリコの温めずにそのまま食べれるカレーと質素ながら(これは美味いですよ!)、登頂を祝って400円の缶酎ハイを注文。スマホのお礼も出来たので充実感に浸りながら至福の時を過ごしました。

お風呂はジャクジー付きで最高。Bunk Bedも快適で熟睡できました。この小屋お薦め

帰路、嘉門次小屋と

北アルプスの開拓者ウエストン碑に立ち寄り、

達成感に浸りながら、何故か上高地にはもう二度と訪れることは無いだろうなあと思いつつ上高地を後にしました。

今回の一連の登山で経験した問題点の改善に向けて実践したこと等を纏めておきます。

  • 登山術のコツ

俺の登るスピードは平均的であるが下山速度は格段に劣るようだ。三浦雄一郎の「歩く技術」には、持久系の有酸素運動に用いられる赤い筋肉と瞬発力が必要な時に使われる白い筋肉の2種類があり、下りでは優先的に白い筋肉が使われる。下りの方が脚にかかる負担は大きいのでこの筋肉を鍛えておかないと歩けなくなってしまい、下りで事故が多いのがこのせい。まさに今の俺の状態だ。登山に慣れた方は下山が本当に速いですね。下山スピードが一種のバロメーターでしょうか。

そこで、昨年日本一周の時は軽視していたのだか、転ばぬ先の杖ならぬストックを使い始めました。情けないが、ストックを支えにゆっくりと体重を下ろしつま先から着地して衝撃を和らげる。下りの動作には非常に気を使いました。岩場ではどの石にストックに置くか難しいですね。

また、バテない山登り方法についても数多の参考書を手がかりに自分なりにチューンアップして実践。心拍数を一定に保つように歩幅を小さくゆっくり登る事がバテないコツの要で、また座った休憩はなるべく避けて歩き続けることが結果的に速くなる事にも気付いて実践した。因みに、水分補給は出来るだけ立ったままで取っている。確か槍ヶ岳では朝飯を取る為に一度だけ座ったような。

  • 単独行での心構え

ルートを間違えて登山者からアドバイスを貰うことが多々あった。本能的にルートファインディングが下手なのもかもしれない。登山客の少ないコースでは身の危険にも関わる由々しき問題な為、敢えて一般コースを利用することにしている。

  • 行動食三種の神器
    かさばらず、軽くて、高エネルギー、高タンパク質の食べ物を選ぶことがポイント。

    • 山崎大きなメンチカツ
      一個でカロリーが約600kcalも有って俺の朝食の定番。消費期限は3日間。好物のバナナは重いのと夏場は熟れやすいのが難点でパス
    • 魚肉ソーセージ
      小腹の足し程度。意外とタンパク質が少なく炭水化物が多い事に気づき唖然としました。代わりを見つけないとなあ。プロテインパウダーは味気ないのでなるべく避けたいのが本音。小腹が満たされない時にはピーナッツをつまむこともある。
    • アミノバイタル
      精神高揚剤的な働きも有るのではないでしょうか。ここ一番のエネルギー補給に効きました。
    • その他
      喉ではなく口が乾くときは適宜塩飴、グミを摂取。鼻ではなく口を開けて呼吸している為だろう。酒類は持参しないが、アルファ米とそのまま食べれるカレーを非常食として数日分必ず持参している

次回登山に向けて天候待機中、初孫の一升餅のお祝いに帰って来いという愚妻の指示。夏山シーズンも終盤に差し掛かり、次回山行を今年中に達成できるかどうか微妙な時期になっていましたが、夜行バスで帰省?しました。

実は登山の前に大仕事が待っていました。

つづく

(参考)心拍数ログ(Garmin Instinctより)

光岳:のっけでバテた証。

空木岳:道に迷った挙げ句、崖の上り下りがしんどかった。最高180超え。

奥穂高岳:ずーっと上りの工程が主体。依然として座った休憩が多い

槍ヶ岳:休まず歩き続けるを実践。登山に体が慣れたのか心拍数も落ち着いている。

Comments are closed.