
JAT〜晩夏の古寺巡礼
日本一周以降、奈良・京都の古寺、岐阜・名古屋の観光地をもう一度訪問したいと考えている。振り出しに今年は福井・奈良・京都の小旅行に出かけよう。京都は野宿が難しい場所であるが、俺にとって旅は野宿と同体の存在。古寺巡りは紅葉の時期がベストだろうが、気温的に野宿に適した晩夏に行くこととする。After the Japan Round Trip, I wish to visit old temples in Nara and Kyoto and go sightseeing in Gifu and Nagoya again. This year I shall go on a short trip to Nara and Kyoto. While Kyoto is a very difficult place for sleeping outdoors, my minimum travel principle is to sleep outdoors. Although the best time to visit old temples in ancient capitals is the time for fall colors, I shall conduct the short trip late summer in light of the outdoor temperature.
行程は熟慮の結果、福井唯ーの国宝を有する小浜の古寺を皮切りに奈良・京都の古寺を巡る行程とする。
具体的には、海岸沿いの8号線を南下して小浜に入る。小浜の古寺を回った後、鯖街道を南下して京都北部に入る。大原、高雄の山寺を拝観後、奈良南東西に点在する古寺を回ってから一転して北上、京都の古寺を巡る半時計回りプランとする。帰路はびわ湖湖岸沿いに走るさざなみ街道を北上、彦根に寄ってから帰る行程である。一日辺りの走行距離は約200km。キツめだが可能であろうと判断。
初日
この時期、日の出は5時半。空が白ける5時に出発する。
8号線は空き軽快に走る。道の駅河野でトイレ休憩する。ここは24時間冷暖房完備で開放しているのでお気に入り。小浜に着く頃はかなり道路は混んで来るが、平日故渋滞はなく、間もなく最初の訪問地若狭神宮寺に到着する。
若狭 神宮寺
寺名の通り神仏習合の寺院である。東大寺へのお水送り神社として有名。
本尊薬師如来坐像と日光・月光両菩薩を従え、それを取り囲むように十二神将と千手観音を安置、更に不動明王と毘沙門天両脇侍が鎮座する不思議な光景。



由緒ある天台宗の古寺の風格が伝わらない。拝観料500円は捨て銭。
若狭 明通寺
征夷大将軍坂上田村麻呂が創建との伝。三重塔と本堂は国宝。
若狭神宮寺と同じく、本尊は薬師如来座像である。五大明王、深沙大将、不動明王像が鎮座する。




何故この辺鄙な若狭にこんな素敵な古寺があるのか不思議。荘厳で静かな佇まい。心が平安になる。
拝観料は500円だが、僧侶から寺院の縁起を直々に受けることもあって良心的な価格設定。気分良く次の訪問地への向かう。
若狭 熊川宿
鯖街道の宿場町の名残りを維持しているが興味を引くものなし。記念に熊川宿郵便局で出金して終わり。


大原へは快走の367号山岳路を抜ける。
京都大原 三千院
女性に人気の大原だけあって女性の参拝者が多い。
聞き及ぶ著名な料亭が立ち並ぶ狭い道を上がっていく。
見世物の往生極楽院に国宝の阿弥陀三尊像が鎮座している。
天台宗の本尊薬師如来を安置する本堂は何処にあるのだろうか?




大原は古くから貴人が隠棲する場として知られているが、建礼門院ゆかりの天台宗の尼寺故、拝観しないが、現地迄向かい山門の佇まいを見学する。
寂光院へは大通りを挟んで三千院参道の反対側を徒歩で20分ほどにある。

貴船神社
涼しい。
参拝中小耳に挟んだのが、水の神様として調理業や水を取扱う商売の人々から信仰を集めているそうな。絵馬発祥の社でもある。道理で混雑している。





特段の空気感も覚えず参拝を終える。
鞍馬寺は貴船神社と敷地隣合わせ故、拝観はパス。

日暮れまで猶予があるので閉館間近であるが神護寺に向かう。
高雄山 神護寺
日本一周時、台風の直撃直後で猶予なく拝観した記憶がある。
4時半、閉館間際だが滑り込む。
境内には俺だけ
真言宗の寺院は何故か落ち着く。
密教寺院特有の雰囲気と威厳が漂い、清閑な空気が張り詰めている。
時の流れは周りの環境に溶け込んだ美しさを醸し出す。
厳かに静まった境内で己が伽藍と一体となって包み込まれる不思議な感覚を得る。
神護寺はお気に入りの寺院。
本尊は何故か国宝薬師如来立像。左右に日光・月光菩薩立像と十二神将立像、四天王立像を配置する。博物館で見た鮮明な記憶が残る国宝五大虚空蔵菩薩像を安置する多宝塔は閉門。




空海が最澄に対して灌頂の儀式を行ったことでも有名。
死ぬまでにもう一度来ますと寺務所に申し伝えて去る。
因みに、近隣の高山寺の参拝は日本一周の折訪問するが台風の影響か受付の人が居らず拝観できなかった苦い経緯がある。ご縁がなかったと理解している。
寝床を探す。選択肢として西京極運動公園か、ライダーハウスを思いつくが、給油で立ち寄ったGSの係員の助言に従い渡月橋の袂で野宿する。
途中で求めたホタテ弁当と余り物のサンドイッチを食う。アルコールを欲しコンビニで酎ハイ1缶買い求める。
初日にも関わらず上首尾に移動できたことで、快い疲労感と満足感に浸りながら、日が暮れると共に眠りにつく。

二日目
ツキに見放される。
真夜中、警官に叩き起こされる。バイクの乗入れは禁止されているので出ていくように指示有り。文句を言っても埒が明かないので、近傍の太秦公園へ移動する。路駐もできて、タクシーの運ちゃんの溜まり場の公園のようである。
寝ようとするが頭が冴えて眠れない。寝ようと寝ようと思いつつ夜が明けるのを待つ。
いざ出発とスマホの電源を入れる。電源が入らない。何度トライしても駄目。Google Mapの利用は諦め地図を頼りに出発する。当初訪問地である大阪の先の當麻への行路は道順が難しく、急遽反対周りの24号奈良街道を一気に南下して奈良に向かうことにする。
恥も外聞も気にせず、ガソリンスタンドの給油中のパトカーに道順を聞く等するも、思ったより手間取る。Google Mapに頼り過ぎの弊害だね。24号線に入るともう道に迷うことはないが、渋滞時間に入り込んでしまい、浄瑠璃寺への行き道を通り過ぎてしまう不運にあう。
道の駅レスティ唐古でトイレ休憩。
朝飯を買う気分でもなくペットボトルコーヒーで空腹を満たしながら、ダメもとでスマホの電源を押す。反応がない。駄目かと落胆しながら諦め半分押し続けると、入電音と共にBootが開始する。ほっとする。ここまで来ればGoogle Mapは必ずしも必要ではないが、理由は何だったんだろうか?
活力が戻りマーケットでパンとジュースを買い求める。東西に走っている165号線経由長谷寺、室生寺へ向かう。
大和國 長谷寺
枕草子に登場する”初瀬詣で”で有名な真言宗のお寺
本尊は巨大な十一面観世音菩薩立像である。
本尊に向かって右手(左脇侍)の初瀬山を守護する雨宝童子立像の方が記憶に新しいかも。
受付で鎌倉の長谷寺との繋がりを問うと、本尊の観音菩薩像を同じ霊木より掘り出したものとの事。
本堂は正堂と礼拝からなる”ならび堂”になっていて回廊の配置は奇抜。本尊の真後ろには裏観音の十一面観音像が安置されている仕掛けがある。幾度も回廊を巡回拝礼する女性を眼にする。
何故か、清水の舞台のような張りでた正堂の表舞台には登壇せずに終わる。





奥の院までは近いが近代風納骨堂で見る価値は低い。
総本家と呼ばれるだけあって奈良の長谷寺の方が寺院の規模・風格は鎌倉より上位。鎌倉は悪趣味な新しい建造物・仏像が多く劣る。拝観料500円。
女人高野 室生寺
真言宗の寺院
本尊は本堂に安置されている穏やかな表情の如意輪観音菩薩像である。観心寺と共に日本三如意輪と称される。金堂には平安初期の国宝釈迦如来立像が、両脇に薬師如来立像、文殊菩薩立像を従え、手前に十二神将立像の六体を配置し、鎮座している。
平安初期建立の五重塔は国内で最も小振りであるが、周りの木々と見事に調和し存在感が一層引き立つ。







奥の院までは長い階段を登っていく必要があるが一見の価値あり。
正に圧巻の寺宝群。拝観料600円はバカ安。
山号の宀一山(べんいちさん)の意味は「室」のうかんむりと「生」の最後の一画という。蛇足だが、別称女人高野の意味については聞き漏らす。
浄瑠璃寺を拝観してから京都に入ろうと考えたが、浄瑠璃寺とはご縁がなかったと考えて、165号線を戻り、関心のある曼荼羅の當麻寺を拝んでから京都へ入ることを決断する。これが結果的に正しい判断であった。Google Mapは強力な武器で迷うことなく素早く現地に到着する。
大和國 當麻寺
南都六宗のお寺として発祥するが、その後高野山真言宗と浄土宗の兼学の寺院となる。
本尊は当麻曼荼羅とは。面白い。
確かに當麻寺の境内は殺風景で荘厳な格式のある古寺の雰囲気は無い。
しかし、一歩お堂内に入るとあっと驚かせられる。
本堂内陣の須弥壇上の国宝厨子に本尊当麻曼荼羅を掛け、北側に十一面観音立像を安置する。金堂に本尊の粘土塑造弥勒菩薩坐像、乾漆四天王立像を配置。金堂の対面の講堂には阿弥陀如来坐像、地蔵菩薩や不動明王等が並ぶ。これら中心伽藍の南方には東西に国宝の三重塔(東塔と西塔)が立つ。
無造作に置かれた国宝は天平、白鳳時代の稀なもの。厨子、須弥壇は見事な物で本尊の当麻曼荼羅を眼前にする喜びは驚きの光景だ。
圧巻の国宝を前に拝観料500円は破格





現在の當麻寺は奥宮との標識があるように一部を指していて、昔は広大な寺域だったのではなかろうか足を運んだ甲斐が有り大いに満足してお寺を後にする。
170号線を北上、京都へ向かう。原付バイクの特技を有効に使えば渋滞一号線は快速なルートに変わる。
寝床に西京極運動公園での野営を考えたが、日本一周の折お世話になったオーナーのご機嫌伺いを兼ね、ライダーハウスボーダーに泊まることにする。
ボーダーに着くと一瞬ベンツがないのを見かけ不安になるが、オーナーの頗る元気な姿を眼にし安堵する。稀なベンツだったので手放したのは残念。長期宿泊の杜氏見習い中の御仁を交え昔ばなしに花を咲かせる。
夕飯は天下一品本店のこってり大盛り。何時食っても精力が漲る旨さ。


満ち足りた満腹感と畳の快適さから熟睡する。

三日目
二条城、国立博物館の見学を予定。バイクをボーダーに預け徒歩で二条城へ向かう。
元離宮 二条城
開城を待って真っ先に入る。二の丸御殿外観、庭園は素晴らしいが、内部は模写の襖絵ばかり見せられて飽きる。拝観料1,300円は高すぎで異常。



この機会に京都御所を見ておきたいと思う。徒歩20分くらいの近距離。
御苑内を入り受付で案内を受ける。案内で十分な気になり内裏には入らずに苑内を少しブラブラしてボーダーへ戻る。次回は紅葉の時期に再訪することを確約して去る。
バイクを駆って京都国立博物館へ向かう。
何と、楽しみにしていた特別展示”金剛寺と観心寺”は展示を終えている。情けない。
京都といえば国内でも有数のラーメン激戦区。京都駅近くの人気店に行くが、行列の人だかりに嫌気が差す。昨晩のこってり大盛りのお陰が空腹感を余り感じない。
昼飯を抜いて一号線に入り京都を出て一路彦根城へ向かう。
彦根城
びわ湖東岸のさざなみ街道を軽快に抜ける。途中オイル漏れの警告灯が点灯したのでコメリで安物の自社ブランドオイルを求め補給しておく。二時間ほどで彦根城に到着する。
三連休もあって混雑している。
天守は外部からは見えない。お掘り内に入場すると天守が見える。
木造3層で小振り。天守からびわ湖を一望できる。
同じ木造天守の松本城に比べてかなり見劣りする。福井丸岡城の方が風格を感じさせる。




近江牛の揚げ物の店が目立つ彦根の町並みを少しぶらつく。
寝床探しにさざなみ街道を北上する。台風の直撃を受ける予報の中早めに帰宅するのが得策だが、北陸は好天の予報。もう一晩野営したく敦賀の峠越えを翌日に持ち越し、賤ケ岳近くの道の駅で野宿する。

夜中激しい風雨に吹かれたが、落ち着いた曇天明け。
最終日
台風の追従を避け、8時半には家に帰る。
何事もなく念願を果たせた3泊4日晩夏の古寺巡礼の旅であった。
もう一度紅葉の京都を愛でに訪れる予定である。実は苔寺(西方寺)の拝観を検討したが、完全予約制で3千円の拝観料。詐欺のような価格設定で憤怒し興味を失う。
日本一周時は雨に振られた京都であったが、今回は台風接近中にも関わらず一滴も振られなかった。残暑厳しい晩夏だったが、却って京都に相応しく。
今回の小旅行に掛かった費用は総額1万6千円。内訳は拝観料4割、給油代3割、残りは宿泊食費を占める。
万感の晩夏にて
以上
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