JAT(Japan Alps Traverse)〜Year 2020

JAT(Japan Alps Traverse)〜Year 2020

今年の山行は勝手が違う。身体の出来具合とテント泊の要領の確認を兼ねた肩慣らしの縦走を企画しようとしたが、長雨で中々梅雨明けにならないし、コロナ禍の影響で山小屋が完全予約制になったのは仕方ないとしても何とお盆近くになるとテント場も事前予約が必要なところもある。これでは山行に慣れていない俺には予定が立てられない。さてどのように縦走計画を立てたものか?

何気なく山中図書館で「黒部の山賊」を見つける。三俣山荘を開設した伊藤正一氏による黒部源流の開拓史だ。鎌倉市図書館にはなかった蔵書だ。深田久弥出身である加賀市の図書館は山岳関係の蔵書が豊富。

「信州、飛騨、越中の三国の境をなす三俣蓮華岳を中心に、白馬連峰から鉢ノ木、烏帽子と連なる山稜と、立山、薬師を通る山稜、それに穂高から槍を経て通る三つの山稜の接合点で文字通り北アルプス最奥の核心部黒部源流の地である。北アルプスの中でも最も風の強いとこと云われる野口五郎ー水晶の尾根は荒れると70メーターは吹くと云われる。
。。。
黒部渓谷といい三俣といい、遠く、険しく、荒れ狂う、世界の果てと言うべきところだった。しかし、天気の良い時は、色鮮やかな高山植物が咲き乱れ、熊、カモシカ、兎、雷鳥などが遊び、清流には岩魚が群れる、天国のようなところでもあった」黒部の山賊

こんな世界を体感したく、「黒部の山賊」の三俣山荘を拠点とした雲ノ平周辺を巡り薬師岳、黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳の頂きを制覇する4泊5日の縦走コースとした。晴天の恵まれる梅雨明け10日、テント場が事前予約制に移行する入盆前に実行することにする。

昨年の苦い経験を踏まえて準備鍛錬も始め、アンクルにウエイト4kgの負荷をかけてリュックを担い片道1時間15分徒歩鍛錬を2週間続ける。

出発当日

気合入れて夜明け前に出発するが、出発後30分位でバイクが変調をきたし、終いにはエンストするようになりキャブからお漏らしも発生する始末。騙し騙し富山迄来たが更に山に向かって高度を上げる必要がある為、家に戻って修理する方が得策と判断、一旦戻る事にした。

帰宅後一休みしてからキャブの分解に取り掛かる。案の定、Debrisが溜まっている。先日の燃料タンクの洗浄が不完全だった影響か。小一時間ほどでキャブの洗浄を終える。

再出発は翌日としキャブの様子を見ることにする。
どうした訳かキャブの調子がイマイチ。お漏らしも直っていない。フロートバルブの摩耗かと嫌な予感がよぎる。ずーっと気がかりだったのはフロートバルブの取付け方法だ。以前向きを確認せずに外れた事があって、それ以来気になっていたのだ。サービスmanualにも具体的な記載はない。

試しに前後を逆にして様子を見ることにする。半日走ってみたが、不具合の再発は無く問題ない様だ。矢張りこれだったかの思いは強い。
良し、これで行こう。

翌日気がせいて寝ておられず朝3時半に出発する。

有峰林道料金所二輪300円

思ったより有峰有料道路道路状況は良かったが、何と5時間半も掛かって折立登山口に到着。家を出る時は調子が今一つだったが、バイク俺共々絶好調だ!

登山者に悪い奴は居ないと信じトイレ横の目立つに場所に駐輪する。

奥はキャンプ場

30分程掛かって登山準備完了。

登山開始

10時登り始める。

折立登山口

リュック重量15kgと軽めであるが俺にとっては充分にHeavy。足の動きは鈍いが、図書館通いの成果が実ってコースタイム4時間で太郎平に到着。

閑散とした太郎平小屋

太郎平小屋

小屋から20分下った薬師峠テント場が今夜の寝床
平日故比較的空いているとの事

Montbellが多い中のShabbyなポールテント

晩飯は定番のカツ丼。初日は何時もこれ。

前日買っておいた賞味期限切れのカツ丼

雲が多くView悪し。明日天候が回復することを期待して日没後就寝

2日目

黒部五郎岳に登頂し、黒部五郎カール経由三俣山荘テント場泊りの行程。タイトなので日の出前の4時40分に出発。白み始めているのでヘッドライトは要らない。

太郎平の標識

尾根つたいに快調に進む

北ノ俣岳頂上

中俣乗越あたりからリュックの重しが腰に負担がきて脚の動きが鈍る。何とか五郎岳の肩にたどり着く。ここでリュックをデポして一気に山頂を目指す。身体が軽い!

黒部五郎岳肩

「これほど独自の個性を持った山も稀である。雲ノ平から見た姿が中でも立派で、、、、『特異な円錐がどつしりと高原を圧し、頂上のカールが大口を開けて、雪の白歯を光らせてゐる』」日本百名山

Viewはイマイチだが槍ヶ岳が顔を覗かせている。槍の存在感は頼もしいね

不動明王の石仏?

五郎カール経由三俣山荘へ向かう。

五郎カール

結果的にこのコースには参った。登山道の足場が悪い箇所も多々あるが、何せ苦手の下りの道程が長く、道を間違えたと不安に駆られることも度々、景色を楽しむ余裕は全くなし。コースタイムを大幅に上回り2時間半もかかってヘトヘトで黒部五郎岳小舎に辿り着く。メンチカツパンで腹ごしらえ。

洒落た佇まいの小舎

気力が充実して三俣山荘へ向かう。

何と、小舎を出て直ぐ始まる、想像してなかった急登に吃驚。体力的に大分疲れているので更なる登りにうんざりとするが、覚悟を決めて淡々と登る。

登りの高み

川渡り、雪渓と何でもあり盛り沢山のコースだが楽しむ余裕はない

早朝は凍って滑るかも?

コースタイムを大幅超過の3時間強もかかって三俣山荘に到着。
受付の美少女にビックリ。小学生でした

鷲羽岳が眼前

水場の近くの空き地に幕営。砂地で設営は容易。トイレは小屋にある

今回幕営した中で最も快適なテント場であった

凄く腹がへり、晩飯はカレー尽くしで満腹感にしたる

3日目

鷲羽岳、水晶岳を登頂。折り返して雲ノ平テント場泊りの行程。

前日同様4時40分に出発。
山荘を出て直ぐ鷲羽岳の登りが始まる。途中槍ヶ岳の朝焼けに感動しつつ、起きがけで体力気力充分。加えて、岩石も小振りで至って登りやすい登山道。快調に飛ばす。

朝焼けの槍ヶ岳

1時間半で山頂に立つ

鷲羽岳山頂

早朝天空はClearなのかViewは秀逸。

「小屋の前から仰ぐ鷲羽は雄々しく美しい。急坂を登って行くと、稜線の右側にスリバチ形の火口湖があって、その底に水を湛えている。これが旧称竜池、現在の鷲羽池である。ここから第一等の眺めは槍ヶ岳で、ここほど気品高く美しく見える場所は稀であろう」日本百名山

ワリモ岳北分岐でリュックをデポし水晶岳小屋へ向う。身軽になって軽快に進む。途中、飛ぶように駆け抜ける水晶岳のガキに追い抜かれる。仕方ないね。

水晶小屋

小屋裏から水晶岳へ向かう。梯子、鎖もあるが登りとしては単調。程なく頂きに到着

ここもShabbyな標識

読売新道方面はあれか?
確か、水晶岳登頂後読売新道を経由黒部へ抜け、五色ヶ原で切り返して、薬師岳登頂後太郎平へ戻るルートを考えた事もあったっけ。真夏の長い行程は俺には難度が高諦く諦めた次第。

読売新道標識

「また一番奥深い山でもある。大いていの山は、その頂上から俯瞰すると、平野か、耕地か、煙りの立つ谷か、何か人気臭いものを見出すが、黒岳からの眺めは全くそれを絶っている。四周すべて山である。文字通り北アルプスのどまんなかであって、俗塵を払った仙境に住む高士のおもかげをこの山は持っている。
。。。
すぐ眼下に、岩苔小谷の深い流れを距てて雲ノ平が横たわり、その向こう側に、どこが最高点か判じ難い上ノ岳の長い頂が伸び、それから左に続いて私の大好きな黒部五郎岳が、特色のあるカールの大きな口を開けていた。その左に遠く、その名に忠実な笠ヶ岳が黒い頭をあげていた。岩苔小谷は近頃注目されたした黒部の支流で、小さな池のある原が見おろされた。そのあたりは高天ヶ原と呼ばれる別天地だそうである」日本百名山

戻り道で雷鳥の親子に出会う

雛は素早くて撮れず

デポしたリュックを回収しメンチカツパンの昼ご飯

ワリモ北分岐

道程に沿って進むと小高い山を上がっていくので、パトロールの方に確認すると、雲ノ平山荘へ行くには祖父岳を越える必要があることを知る。これは時間がかかると覚悟する。

祖父岳山頂

山頂から遠方にテント場が見える。
これからが長かった

右側から迂回する

これがスイス庭園なのかと気を取られるが感動もせず先を急ぐ

スイス庭園巡りなし

山荘が視野に入る。

雲ノ平山荘への木道

4時間もかかって山荘に到着。

テント場の受付をする。
テント場は来た道を30分程戻る必要があって超不便。水場、トイレ双方に遠いガレ場のテント場。更に、1,500円と割高

期待した水晶岳(黒岳)の雄姿は見えず。

「雲ノ平は山に包まれた美しい高原であるが、そこから眺めて一番まとまりのある堂々とした山は黒岳である。もしこれがなかったら、高原の値打ちの半分は減じるだろう」日本百名山

夜中、雷雨の音で目を覚ますが、支障なし

最悪のテント場

4日目

雲ノ平から薬師沢経由起点の太郎平へ戻り薬師岳に登頂する行程

4時半に出発
木道を軽快に進んでいく

木道が続く

木道が切れると急激な下りに入る。下り自体は大したことないが、距離的に長く、大岩が多くて苔で滑りやすい。見事に俺の弱点が露呈し、コースタイムの約倍の4時間も掛かかって、やっと思いで薬師沢小屋に到着する

メンチカツパンの朝飯を食い、薬師岳登山が控えているので、休憩15分で出発

小屋横から登っていく。所々木道なので歩きやすい箇所が多い

最後の上りを越えて暫く歩くと、遠目に小屋が見えてきた。

薬師峠テント場に幕営場所を確保しリュックをデポしてからウエストポーチの軽装で登山開始

「その重量感のあるドッシリとした山容は、北アルプス中随一である。厳とした気品もそなえている」日本百名山

登り始めはガレ場が続き登り難いが、三角点を過ぎた頃から普通の登山道に変わる。

「白い砂礫のザクザクした尾根で、右手には黒部の谷を距てて、雲ノ平の大きな台地を望み、左手には有峰のダム湖が覗かれる」日本百名山

「右手に大きなカールが眼下に口を開けていて、その内壁の縞が美しい」日本百名山

薬師岳カール

山荘を過ぎ、砂利道を黙々と登っていく

薬師岳山荘裏

一瞬山頂かと錯覚したが、
「この膨大な山は、行けども行けども、頂上はなおその先にあった。やっと頂に達したが、それは薬師北峰と呼ばれるもので、本峰までそれからまた大きな岩のゴロゴロした長い道のりを行かねばならなかった」日本百名山

北峰から20分程で本峰山頂に立つ

強風だったので15分程の滞在で下山を始め、2時間半でテント場に戻る

薬師峠テント場

最終日

天候の悪化を危惧して早出する。5時に下山開始。下山途中で早くも雨が降りだしてきた。予報より早い。3時間半かかって折立に戻る。

折立キャンプ場横

バイクは異状なく、ホッとする。
これからが大変、自宅迄5時間の道程
雨も本降りになってきたので、昨年の奥穂高登頂の時と同じだなあと考え深く思いながら、安全第一を心掛けて戻ろう。

総括

重量15kgリュックを担いでの縦走は問題無く達成、併せてテント泊の要領、問題点も掴めたが、景色を楽しむというより必死に歩いたという感触が強い。特に、今回の縦走の本来の目的であった身体が出来上がっている事を確認できた事は非常に嬉しい。愈々念願の「試練と憧れ」の剱岳にチャレンジするタイミングだ!

  • 重いリュックが無ければ登山、縦走自体は大した事はない。しかし、下りの遅さは如何ともし難い。改善の余地も限定的だろうし、諦めるしかないのか?
  • どっしりした山容の秀麗な薬師岳の登山自体は単純。俺は水晶岳の登山が一番気に入った。鷲羽岳、黒部五郎岳は特段の感慨なし
  • 軽い頭痛を感じ高山病の兆しも自覚
  • テントはアウターのみ持参したが、夜露が多く発生し寝袋がビショビショになる問題が顕在化。夜中寒くて寝袋が役に立たない事も判明。レインウエアを上下着て寒さを凌ぐ
  • 一般ガス缶も使用可能。ただ着火ライターはフリントタイプがベター

以上

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