SMART〜The Newton Convergence Criteria
SMARTシミュレータの重要論点について番外編Tipsとして数回に亘ってお届けしよう。第一弾のテーマはニュートン法の収束判定条件である。I wish to talk about some tips in light of the vital technical subjects in several occasions with regard to the SMART simulator. The first theme is the newton convergence criteria.
Mass Conservation Residual Formulation
リザーバーシミュレーションを規定する偏微分方程式(Mass Conservation Equation)はニュートン法にて線形近似化して大規模な非対称疎なヤコビ行列を係数行列(Incidence Matrix)にもつ連立1次方程式を数値解法によって近似解を求める事は既承の通り。
残差(Residual)はMass Conservation Equationに於ける全格子の総和となる。
$$Residual = Accumulation Term – Flow Term + Source Term$$
上式に於いて\(Flow Term\)の寄与は相互に相殺される為、\(Accumulation Term(M)\)と\(Source Term(Q)\)の総和となり、三相状態に於ける各相の残差\(RES_{m=o,w,g}\)は次式で与えられる。
$$\sum_{i}(RES_{m})_{i}=\sum_{i}(dM_{m}/dt)_{i}+\sum_{i}(Q_{m})_{i}\tag{1.0}$$
これは物質収支(Material Balance Error)に他ならない。ここで、\(RES_{i}\)が格子\(i\)に於ける残差を示す。
依って、今回のテーマであるニュートン法の収束条件の考え方は、一般的に該当方程式の残差をゼロにする解を求めるのではなく、許容値内に収まった時点で収束と見做す。
Criteria for Newton Convergence
以下の三種類の収束判定条件が考えうる。
- Material Balance Error
- Normalized Residual Error
- Primary Variable Change
Material Balance Error (MBE)
第一の収束判定条件は物質収支誤差(MBE)の判定となろう。
物質収支誤差は次式で与えられる。
$$MBE_{m} = \bar B_{m} dt\left \{\sum_{i}(R_{m})_{i}/\sum_{i}(PoreVolume)_{i} \right \}\tag{2.0}$$
Normalized Residual Error (NRE)
第二の判定条件は残差の判定を確認する。
三相状態に於ける各相の残差\(NRE_{m=o,w,g}\)は飽和率でNormalizeし、次式のようにL1ノルム(L1 Norm)で示す。
$$NRE_{m} = \bar B_{m} dt\left \{MAX_{i}|(R_{m})_{i}/(PoreVolume)_{i}| \right \}\tag{3.0}$$
\(MAX_{i}\)は全格子に於ける最大値、\(\bar B_{m=o,w,g}\)は容積係数(Formation Volume Factor)の平均値を示す。
ECLIPSEシミュレータは①MBEに加えて②NREの双方を収束判定条件と課している。一方、IMEXシミュレータは②NREのみを収束判定条件としている。MBEはNREより厳しい判定条件である故、IMEXの方が緩和な条件設定を採択していることになる。これはNested Factorization前処理の方がILU前処理に比べてMBEが相対的に低い結果を得られる特性に起因する。俺はこの点を最も有意と評価している。
Primary Variable Change (PVC)
更に、SMARTではPVCを追加設定している。本手法は独立変数の変化量を収束判定に組み込んだものである。解くべき独立変数の変化量が許容範囲内になった時点で収束と見做す手法である。これは基本的にiSMARTの遺物を受け継いたものであるが、IMEXの当初のPrimitiveな収束判定条件でもある。
判定条件としてはMBE > NRE > PVCの順で緩和する。即ち、演算速度はPVC > NRE > MBEの順で優位となる。iSMARTシミュレータは、坑井独立変数を坑井圧力1個のみとし演算速度の高速化を図っているものの、数値微分を適用している為収束性並びに演算速度はSMARTに比べて格段に劣る。そこで、iSMARTに於いてMBE乃至はNRE判定条件双方に対してPVC判定を自動的に追加する仕組みとし演算速度の高速化を図っている。
Default Tolerance
SMARTに於いて各判定条件におけるDefault Toleranceは下表の通りである。
Item | Value |
MBE | 0.0000001 (1.0e-07) |
NRE | 0.001 (1.0e-03) |
PVC | Pressure Change: 2.0 Psia Saturation Change: 0.005 |
以上
つづく
References
- ECLIPSE Technical Description
- IMEX USER GUIDE
〆